聖なる実験

1

出したと言った方が正しいかもしれない。多分さっきの音は機体の一部が脱却して、加速したために起こったのだろう。しかしこの脱却作業は2100年の地球到着を目指すために、我々が宇宙に滞在12年を機に起こるはずのものだった。つまり12年後に起こるはずのものだった物が100年後に起きたということであり、言い換えるなら宇宙での1年は地球での9.6年に値するということだった。一応私はGTに音の原因を聞いた。
「GT音の原因は何だ？」
「それは機体の加速のために生じた、機体の一部の離脱です。目立った外傷は確認できません。」
「そうか、良かっ…
その瞬間私は目の前が真っ暗になった。
私は夢を見た。地球にいた頃の夢である。これはいつの夢だろうか。母が遊園地に連れて行ってくれる。父が私の大好物のサーモンを買ってきてくれる。とても心地が良い。
ハッと目が覚めると、そこはソファの上だった。10年も使われていないソファはまるで綿毛のようにふわふわしていた。それはさっきの夢と同じくらい心地の良いものだった。起き上がるとGTが心配そうに（機械に感情は無いと思うが）私の元に来た。
「シュナイダー様、大丈夫でしょうか？シュナイダー様は低酸素症になっておりました。原因は長時間のコールドスリープによる筋肉の衰え、及び脳波の微弱化にあると思われます。」
「そうか、わかった。ありがとう、GT。」
そう言いながらも、自分を冷静だと思い込ませるためな、さっきの夢のことばかり考え、ソファの上でまた横になるのであった。