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ヴェールは研究室に戻ると当時のタイムマシン実験の資料を読み始めた。
資料1・・タイムマシン構想
1 タイムマシンの時間移動について
※ここでは論争で発表された主な3つの意見を書き記す。
「時間論の定義の間違い」
ガウン教授発表。
内容・・過去、未来は存在しない。
根拠・・存在するのは現在だけであり、レールのように時間は続かない。あくまで今の繰り返しである。言い換えるなら今という「時」は変わらないが一つ一つの「今」を生きている我々、もしくは生物の営みがその一つ一つの「今」で違うということである。このことがいわゆる過去とか未来と言われるものに変貌する。よって時間移動は過去、未来の「今」の全て行動を知覚することによって可能になる。例えば、映写機のように今でているもの(映写されているもの)とその後に出てくるものを比較すると、後者は知覚できないことがわかるだろう。これなら既視感の理由も説明できるだろうし、タイムパラドックスも発生しない。
「タイムパラドックスに基づくタイムマシン理論」
山本辰雄教授発表
内容・・過去へは行けない。未来にしか行けない。
根拠・・過去へ行くことでタイムパラドックスが起きる可能性がある。未来へはそのような過去からの矛盾が生じない。しかしこれはあくまでタイムパラドックスを時間、過去から未来という時間の妨げ要素になることを前提としているため、もしタイムマシンで過去に行くという一件が過去の出来事として既に固定化されていたら私の意見は破綻する。
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