第二十三話

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「警察がいくら探しても行方はわからなかった……町中の人はいつか戻ってきてまた暴れるんじゃないかと戦々恐々だったよ……でもね」 祖母はその後を続けようとして一旦黙った。 表情には明らかに逡巡が見て取れる。 口を開いてから絞り出すように語りだした。 「その家の地下室から家族ではない親子の死体が見つかって……」 「それも記事で見た。でもどこの誰かは一切書かれていなかった」 私と祖母が話しているのを、余計な茶々をいれることもなく巴は黙って聞いていた。 「惨たらしい虐待の跡が体中にあってね……しかも発見されたときは腐り始めて虫がわいていた……それはそれは凄惨な死体だって聞いたよ」 「誰なの?それは誰だったの!?」 「それが美奈子さんだったんだよ」 私はそのとき頭を殴られたような衝撃を受けた。 いなくなった美奈子さんはすぐ隣の家にいたのだ。 それも十年間、地下室に監禁されて。 「その子供は美奈子さんの子供だとわかってね……町中はまた大騒ぎさ……ただ、あまりにも凄惨無比な内容と影響、残っている血縁者のことを鑑みてどこも記事で明確には書かなかった」
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