第二十三話

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祖母は天井を見上げながらなにかを思案するようにしばし沈黙すると、大きく息を吐いてから話を再開した。 「すぐ隣にいながら帰れない美奈子さんの無念、恨みはまさに骨噛むほどの憎悪だと私は思ったよ……それから一ヶ月したころだったかな……私は美奈子さんを見たの」 「見た……?ちょっと待ってよ!美奈子さんは亡くなったんでしょう?」 「言っただろう?私は見えないものが見えるって」 背筋がぞっとした。 「美奈子さんは自分の家に帰ってきたんだ……あの家の前を歩いたときに二階から私に微笑んでいるのを見たんだよ」 「それはおばあちゃんのことを覚えていたから」 「多分ね……しばらくしてその家に住んでいた家族はいなくなった」 「それって行方不明?」 「それだけじゃない。夜道を歩いているときに私の友達の家に美奈子さんが入っていくのを見たんだよ。小さい女の子を連れて。私はあれが美奈子さんの子供だとすぐにわかった」 「庭に面した窓の開いている隙間から入っていくのを見てね……それから数日して友達は死んで、家族も死ぬかどこかに消えてしまった」 「どうして友達の家へ?関係ないじゃないですか」 巴が首をかしげて言う。
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