第二十三話

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「それから美奈子さんのことは一切口にするのは止めようということになったんだよ。せっかく一カ所に留まるようになったのだから、わざわざ呼び込むような真似は止めようってね。それでも稀に生きてる人間の家に灯る明かりが羨ましいのか、窓の隙間から幸せそうな家族を眺める美奈子さんを見たよ。もちろんなんの関りも持たなければ祟りはない。でもすぐ外にこの世ならざる者が佇んでいることは恐ろしいことだし、何かの拍子で入ってくるかもしれない」 「だからちゃんと閉めないとおとないさんが来るって?」 「ええ。最初はおとなりさん……つまり美奈子さんをさらった隣の家にいた岡野を指して「お隣さん」という意味だったの。隣から、隙間から入る化け物は岡野であって美奈子さんではありませんということと、美奈子さんのことを思い浮かべないためにもね。口にしない、思わない、考えない、とにかく一切関わらないことが一番だと決めたの」 そこまで話すと祖母は疲れ切ったようにテーブルに手をついて大きく息を吐いた。 「おばあちゃん!大丈夫!?」 「ああ、大丈夫……大丈夫」 祖母は姿勢を正すと私に向かって質問した。 「瀬奈、あなたは前に聞いたときに家に入るときに声をかけたって言ったじゃない?」
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