第二十四話

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「先生。ありがとう」 私は微笑んで首を振ると「早く家に入りなさい」と言って車のドアを閉めた。 車が出てから振り向くと巴が手を振ってから家の中へ入っていくのが見えた。 「ありがとう伊佐山君。おかげで私もあの子も……おばあちゃんもあの子の家族も助かったわ」 「いいんだ。桂木さんが無事でよかった」 自分の無事を改めて噛締めるとふいに涙が流れてきた。 「どうしたの?」 「友里や綾香のことを思うと……」 「すまない。もっと早く除霊ができてれば」 「違うの。そういうことじゃなくて……ごめんなさい」 家の前に着くころにようやく涙も収まった。 「ごめんね。せっかく送ってくれたのに泣いてばかりで」 シートベルトを外しながら言う。 「いいんだよ。気にしないで」 先に降りると伊佐山君が助手席のドアを開ける。 私が出たときにふいに抱きしめられた。 「……伊佐山君…?」 「よかった!無事で!本当に良かった!」 力強く私を抱く伊佐山君の腕と胸板から温もりを感じた。 「ありがとう……」 その温もりに身をゆだねるように私は伊佐山君の背中に手を回すと、見つめ合い唇を重ねた。 祖母に無事な顔を早くいせてあげたいけど、もう少しだけこうしていたい。 そう思いながらもう一度唇を重ねた。
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