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(そうだ、今回は俺直々に労ってやらんこともない。多少はあやつも驚くだろう。) いつもは照れが先行して、素直になれないウィレムであったが、今回ばかりは長期戦への労いと日頃の感謝の意を伝えたいと、そう決心したのだ。 それから七日経ち、丁度夕刻の頃である。 ウィレムは少し落ち着きがなかった。 それは一昨日の朝方、敵軍が白旗を上げたとの報告が入ってきたからである。 つまり今日、スカーレットが自軍とともに帰還するのだ。 本日中の仕事も、今日の為に早々と片付け、残るは急を要さないものばかりとなってた。 ウィレムは疲れが出てきた目元を指先で抑え、しかめっ顔をほぐすが、気を抜くとそのまま眠りこけそうで、また眉をぎゅっと顰めた。 深く腰掛けていた椅子にも座り直し、あともう一踏ん張りと気合いを入れ直した時である。 コン、コン 「ウィレム…少しいいか…?」 幼馴染で側近のガインが政務室の扉を控えめに開いた。しかし、いつもより幾分も暗い声で入ってくるガインが不気味に感じられる。
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