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今のウィレムは正常じゃ無い。 またすぐに襲い掛かってくるかもしれないとガインは身構えるが、彼は心ここに在らずといった様子で呆然とその場に立ち尽くしているだけだった。 「確かに大事な婚約者を亡くしたことは辛いだろう…だけどな、お前は王族だ。自分の行動に責任を持て!私情で動いて場を乱すな!」 ウィレムを強く諭すような口調でガインは口を開いた。 しかし全く納得していないのかウィレムは寒気を催すような眼光をガインに向ける。 「ウィレム、分かってくれ…」 ガインは身体の横に付けている握りこぶしを強く握りしめ、その鋭い眼光から逃れるようにして顔を背けた。 しばらく続く沈黙、ウィレムは終始俯いたままであった。 「それは…いつの話だ…」 「七日前の話だ…」 「……っ!なぜ…すぐに言わなかった…」 ボソリと小さくも激しさの残る声に心が軋んだ。 王子の前に、大切な昔馴染みである彼の辛い顔は非常に堪えがたく、針を飲むような呵責の念がどっとガインに押し寄せる。 「クソっつ!!」 ウィレムは乱暴に毒吐くと、おぼつかない足取りでガインの肩にぶつかりながら執務室を出た。 彼の向かう先は勿論、もうすぐ登城予定の戦地から帰還してきた兵士たちが集まる謁見の間である。 (…きっと何もかも悪い冗談だ。夢なら早く覚めてくれ!!) この目で確かめなければ何も信じられないと、ウィレムは感傷の色を浮かばせた顔で、謁見の間へと急ぐ足を速めた。 「これはこれは、ウィレム殿下ではありませぬか。」 そうウィレムを呼び止めたのは、どっぷりとした腹を重たそうに抱えた大臣。 こんな状態で足止めを食らったウィレムは、大臣を睨み潰そうとするかのように、殺気を含んだ大変な剣幕で忌々しげに睨み上げる。 しかしそれに気付かぬ愚鈍な大臣は、まだベラベラと減らず口を叩いた。 「いやあ、私も耳に入れましたよ。気の毒でしたな。まあ、貴方様にとっては貧乏くじの婚約者だったでしょうし、傷なく手放せたことは吉といったところでしょうよ。戦機としては優秀な娘でしたが、いかせん見目が恐ろしい。ところで、うちの娘なんてどうです?器量も見目もよろしいでしょう?殿下のお眼鏡に叶うなら…っっ!!!」
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