かみひとつ

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 そんな話をしている間にも、怒鳴り声は事務室にまで響き渡っていた。 「っざけんな! こんな会社辞めてやるよ!」 「あ! 湯沢!」  どうやら話が落ち着いた、というか、湯沢さんの強制自主退社によって終幕を迎えたようだった。  バタンと会議室のドアが閉まる音が事務室の壁にも反響する。その数秒後に事務室のドアが思いっきり開いた。 「あ、すみません、騒がしくって」 私たちに気づいた湯沢さんが、数秒まで怒っていたとは思えないいつもの爽やかな顔で謝ってきた。湯沢さんはポンコツ社長とは違って、感情を八つ当たりしてこないから、いつも大人だなぁと私は感心している。 「聞こえてたかもしれないですけど、僕辞めますね」 湯沢さんは、早速事務室に置いてある荷物を一掃していた。持ち帰るものとゴミを大きな紙袋に分別して入れていた。普段、事務所には置いていないとても大きな紙袋を見る限り、昨日からもう辞める準備をしていたのだと悟った。
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