死の淵の挙式

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 私たちは結婚の報告をするために、私の両親の元を尋ねた。両親は私の恋人をすぐに気に入って、受け入れ、私たちの結婚を認めてくれた。そして彼を、私たち家族の思い出の場所へつれていく、といって、遅い時間なのに、わざわざ車に乗って、みんなで裏山へむかった。  山頂でランプやヘッドライトや懐中電灯、ありったけの明かりを灯して満開の桜を照らし、そこで私たち家族のこれまでと、私と彼のこれからを語り合った。  事故はその帰路でおこった。山の下りのカーブで曲がり切れずに、道路からコースアウトしてしまった。  助手席にいた父は投げ出され、運転していた母は落ちた衝撃でつぶれた車体に足を挟み、後部座席にいた彼は隣の私に覆いかぶさって、いたるところに体をぶつけた。それがあまりに沢山だったから、彼の腹を破ったものの正体がなんなのかさえも分からない。  父の他にカバンもどこかへいってしまっていた。その中には、皆のスマートフォンがはいっていた。山を歩くのにポケットにいれていては邪魔になるだろう、といって私がみんなのぶんを預かっていて、家についたら返すつもりだった。私の余計な行動のせいで、助けを呼ぶことさえできなかった。  私以外が致命傷を負っていた。そして私の心の傷は、私にとって致命傷だった。  可能な限りの救助と避難を済ませた。けれどそれらはどれも死から逃れるには不十分だった。
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