サヨナラはその日、突然に

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猫は自分の死に際を人に見せないと聞いた事がある。 それが正しいのなら、ニコは死期を悟って姿を消したのかもしれない。 だが…… ニコは17歳になったばかりのお婆ちゃん猫だ。 俺が産まれる前にウチに貰われてきた。 種類はバーミーズ。 中々子宝に恵まれなかったウチの両親が、我が子の代わりにと迎えいれた仔猫だった。 しかし直後に母親が懐妊し、俺が産まれた。 それ以来、ニコは俺の姉のような立場で、家族として過ごしてきた。 しかし、今年の誕生日を過ぎた頃から体調を崩し、ここ最近はお気に入りのソファの上で、日がな一日横になる状態が続いていた。 猫イコール寝子であり、人間に換算すると80歳台の年齢なので、それもあるべき姿なのかもしれないが、食事量が極端に減った為、病院に連れて行く事になった。 そして受診日の朝、ニコの姿はウチの中から消えていた。 家族になって以降、完全なウチ猫として成長し、窓の隙間からバルコニーに出ることすらしなかったニコ。高層マンション住まいであり、他所に行くなんて考えられない状況だ。 万が一の転落も考慮し、周辺を隈なく探したが、2週間経っても見つからなかった。 「ニコは頭が良いから、最期を悟っていたんだろうな。私たちも覚悟を決めて、キチンと送ってやろう」 親父がそう言い、家族でしめやかにニコの葬送を行った。 お気に入りだったオモチャを形見にして、写真の前に供えた。 僧侶の読経を聞きながら、涙を拭う親父と、嗚咽するお袋を見ていたが、俺には全く実感が湧かなかった。 遺体を見ていないと言うのが、一番の理由だが、それよりも、ニコが俺との約束を忘れるはずがないと思ったのだ。 あの夜、ニコは俺にハッキリ言ったのだ。 曰く、私の最期をシッカリ看取って欲しいと! 俺はそれを了解して約束したんだ。 そんなニコが俺に黙って姿を消す訳が無いだろ?!
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