一応のケジメ

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一応のケジメ

庭下が捜索に協力するようになって半月ほど経過したが、ニコの行方はいっこうに分からなかった。 休みの日には二人で町中の疑わしい所を巡ったりもしたが、手掛かりは全くなかった。 「有り難う、庭下。ウチの猫がいなくなってあと少しで二ヶ月になる。それを過ぎたらケジメを付けようと思うんだ」 俺の言葉を聞いて、庭下は悔しそうな顔をした。 「ごめんね。偉そうなこと言って、役に立てなかったね」 「いや、庭下のおかげで、猫について今まで知らなかった事も分かったし、俺は感謝している」 「ねえ、もし捜索が終わっても、一緒にお弁当食べてくれる?」 「え? それは別にいいけど。庭下が嫌じゃなければ」 「やったあ!」 笑んで見せる庭下に、微かに胸がきゅっと締め付けられる思いがした。 それが何の感情であるか、俺はうすうす気づいていた。
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