いつもの姉妹

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「わかった、覚えとくね、じゃあ行くよ私…ビールご馳走様ワインとチーズごめんね。」玄関でハイヒールを履く里穂、ああなるほどなと納得なのだ、ふだん仕事の時もフラットパンプスしか履かない里穂が若干ふらつきながらハイヒールに足を突っ込むにはそれなふりの理由があったのだ。「あ、彩ちゃん!さっきの映画さぁ、彩ちゃんの好きなサド侯爵の本に世界感が似てたよ!彩ちゃんが勧めるのわかった、ソフトエログロな感じで、でもやっぱ私はスーサイドスクワットが観たかったかなぁ~又時間作って観にくるね!バイバイ!」ご機嫌な口調で里穂は手を振り、彩花は気だるくドアを閉めた。 彩花のアパートは世田谷線の上町の駅近くだ…上町から三軒茶屋までローカルな世田谷線に揺られながら、いつもより綺麗な自分に愛人が気がついてくれるかどうか里穂はドキドキしていた。「ママ?この電車バスみたいで楽しいね?」えっ…里穂は周りをキョロキョロしてしまった。「確かにバスみたいかもね、電車の中にPASMOかざす所もあるしねー、もう次終点だから降りるよ。」4歳位の男の子と自分と同じ位の歳の母親が斜め前に座っていて楽しそうに男の子は笑っていた。確か…初めて息子の蒼を世田谷線に乗せた時も同じような言葉を蒼から聞いたのを、里穂は思いだした。そう言えばここ半日全く蒼の事を考えなかった。うまれて初めて親元を離れて合宿に向かった息子、今頃は夜になって自分を恋しがっているかも知れないのに…自分は今の今まで男の事しか考えていなかった…それに気づいた時に世田谷線は三軒茶屋駅に着いた。 待ち合わせは茶沢通りにある半地下のダイニングバーそこに着くまで慣れないハイヒールでぎこちなく歩きながら蒼の事を振りきってみようと愛人の琢磨の事を考えた、初めて会った時の事、自分が結婚をきめた時の事、琢磨が結婚する時相談された時の事、初めて結ばれた時産まれ初めてオーガズムに達した事…。たかだか3.4分の道程で、女と母性が格く闘していたのだが、…結果残念ドローの時間切れに終わってしまい、中途半端な気分で待ち合わせのダイニングバーに着いた。
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