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琢磨が素直で嘘がつけないのは生まれもった性格だろう。しかしここはもう少し本当の事をそのまま言って欲しくは無かった…。「じゃあこれからあんまり会えないね…」沈黙が続くのは気まずかったので里穂はぼんやり呟いた。「え?なんで、排卵って月一だし、後は今までと変わらないよ。大丈夫?。」この言葉に里穂はめまいがした。男ってなんて幼稚なんだろう。会社じゃ仕事が出来る方で人望もあつい琢磨。里穂に対してもいつも紳士的だったイメージがなんだか一瞬でガラガラ崩れた。「あのさ、一回二回じゃ無理かも知れないけど、排卵日気にするのは妊娠するまででしょ、妊娠したら悪阻もあるかもしれないし、メンタルも不安定になったりするから、帰りだって早くしないと奥さん不安がったりするよ…今までは奥さんもバリバリ仕事してたから気にならなかった事も、いざ妊娠して自分が仕事セーブしたりしたら今まで気にして無かった旦那の行動が目についたり自分
がお酒も飲め無くて、今まで出来た事が出来ないのに旦那が遊んでたりしたらイライラするでしょ。会社の飲み会だって許せなくなっちゃったりする人もいるし、自分とお腹の子で頭いっぱいになるからさ…特に一人目妊娠の時はね。もし浮気なんかバレたら離婚と、慰謝料と、養育費か、一生奴隷にされるネタにされるよ!」余りにも子供を作る事に対して安易な考えなのはどこの男も一緒なのか?射精したら終わりだと思っている無責任な男が目の前にいると思うと里穂はイライラがとまらなかった。琢磨はもう少しフェミニストだと思っていたのに…。「そうか、そうだよね…里穂ちゃんも子供いるし、お互い様な感じで、今までとそんなに変わらないで行けるかなぁって思ったんだけど、そんなに甘くないかぁ…」初めて先生におこられた小学一年生みたいに琢磨はシュンとしてつぎの瞬間グイッとモエのグラスを飲み干した。「おかわりしても良い?もう1杯飲んだら、私帰るか
ら…あと30分後くらいに出てかえれば、家に9時半には着けるんじゃない?それなら仕事普通にして帰ったのと変わりないしちゃんと排卵日に備えて帰って来た感じで良い感じじゃない。あ!すいません!お代わり2つ下さーぃ。」琢磨が返事をする間もなく里穂は店員にモエを頼みカマンベールチーズをかじった。
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