いつもの姉妹

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「ごめんね。じゃああと1杯で帰らせて貰うよ、家帰ったらとりあえず喉乾いたーとか言ってビールでも開けるよー酒臭いのバレないように…へへっまぁ、あいつが先に帰ってるかわかんないけどさ…」琢磨がブルーチーズに手をのばした。ペチンとその手を里穂が叩く。「ブルーチーズの口の匂いのほうがよっぽど臭いでしょ…二人で食べたなら大丈夫だけど、キスしたら歯を磨いてもわかるよ。本当気をつけてね?」うんうんと琢磨は頷いて、匂いの無さそうなナチュラルチーズを食べた。世の中には自分の存在を妻にアピールする為に技と口紅やら香水の匂いをシャツに擦り付ける女もいるのに自分は何て謙虚なんだろうと自画自賛したくなった。「里穂ちゃんもタイミング治療とかしたの?」ほくそ笑みそうになっていた里穂は慌てて表情を引き締めた。「え?してないけど…避妊しないで普通に過ごしてたら結婚して半年で妊娠したんだけど。まぁまだ20代だったしまだそんな に焦って無かったからかな。でもさ、奥さん検査して特に悪い所無かったから今タイミング治療してるんでしょ?琢磨君も調べた?」「調べたよ、普通はいきなり男は調べないみたいだけどね、嫌がる奴も居るかららしいけどまぁ、俺別に嫌じゃないしうちの嫁そう言うの有無も言わさすやれっ!って言うタイプだからね。一応ちゃんと種ありだったよ。」「じゃあそのうち出来るんじゃ無いの?頑張ってねパパさん。私もう出るよ…今の時間ならバスあるからバスで下北沢に出るね。楽だし。ご馳走様じゃあ又ね。」「えーやっぱりおこってるの?又連絡するから近いうちに会おうよ。」里穂は手だけふって何も言わず店を出た。食べ残されたチーズと情けない顔をした琢磨を残して慣れないハイヒールでヨロヨロと茶沢通りのバスに乗って夜の街をぼんやり眺めた。
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