ようこそ

4/4
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/56ページ
もう何が何だかわからない。 でも、きっとあれが、噂されていた―――― 「――あれ?」 私、ここに何しに来てたんだっけ? 願いをしにきて、それで―― 「……いいや、帰ろう」 少女は考えることを止めて、青色の鳥居に目を向けることなくくぐり、階段を下りて去っていった。 「こうやって見ると、人は面白いわねぇ」 零は、あっという間に見えなくなっていった、制服姿の少女がいた場所を見つめながら、嬉しそうに微笑む。 「記憶は残らねぇとはいえ、お前、もうちょっと自重しろよ」 楽し気な様子の零に、呆れた様に洋は言う。 「フフフ、洋がいるから大丈夫」 根拠もない言葉に、洋はため息を返した。 「あ、ほら、またお客さんが来たわ」 「今日は多いな……」 「今度も女の子かしら……あら、私と同じくらいの女性かな?」 無邪気に瞳を輝かせる零に、洋はフッと笑みを浮かべる。 「こっから見てっから、行きたかったら行ってこい」 「うん!」 洋の言葉にパァっと顔を輝かせて零は嬉しそうに頷くと、鳥居の前までふわりと飛んで行った。 階段を重い足取りで上っていた女性は、青色の鳥居に驚き、そして、その前に舞い降りてきた赤い美しい女性にまた驚き目を丸くする。 「ウフフ、ようこそ。青と赤の社へ」 零は、ブレスレットを煌めかせながら赤紫の着物を広げてお辞儀をし、願いを求める女性を出迎えた。 Fin
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!