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もう何が何だかわからない。
でも、きっとあれが、噂されていた――――
「――あれ?」
私、ここに何しに来てたんだっけ?
願いをしにきて、それで――
「……いいや、帰ろう」
少女は考えることを止めて、青色の鳥居に目を向けることなくくぐり、階段を下りて去っていった。
「こうやって見ると、人は面白いわねぇ」
零は、あっという間に見えなくなっていった、制服姿の少女がいた場所を見つめながら、嬉しそうに微笑む。
「記憶は残らねぇとはいえ、お前、もうちょっと自重しろよ」
楽し気な様子の零に、呆れた様に洋は言う。
「フフフ、洋がいるから大丈夫」
根拠もない言葉に、洋はため息を返した。
「あ、ほら、またお客さんが来たわ」
「今日は多いな……」
「今度も女の子かしら……あら、私と同じくらいの女性かな?」
無邪気に瞳を輝かせる零に、洋はフッと笑みを浮かべる。
「こっから見てっから、行きたかったら行ってこい」
「うん!」
洋の言葉にパァっと顔を輝かせて零は嬉しそうに頷くと、鳥居の前までふわりと飛んで行った。
階段を重い足取りで上っていた女性は、青色の鳥居に驚き、そして、その前に舞い降りてきた赤い美しい女性にまた驚き目を丸くする。
「ウフフ、ようこそ。青と赤の社へ」
零は、ブレスレットを煌めかせながら赤紫の着物を広げてお辞儀をし、願いを求める女性を出迎えた。
Fin
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