ソレイユの回想

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体に複数の傷を負い、動けなくなった機械少女は思い出す。 かつて自分が仕えていた人続の少女のことを。 ソレイユは機械族であり、日常は合理的な計算と理性的な判断の積み重ねでしかなかった。そんな毎日を変えたのは、とある争いに巻き込まれ、家族を亡くしてしまった少女だった。 ソレイユはもともと、対戦特化型の機族ではない。負傷したものを戦場から遠ざけたり、前線の味方の援護を行ったりする、支援型兵器であった。そんな彼女は、戦場に力なく横たわる小さな命を見過ごすことはできなかった。強いもの、余裕のあるものが弱きものを守ることは彼女にとって必然の道理であったのだ。だから、何のためらいもなく、少女を安全な場所まで避難させることにした。 人族の少女を機族の陣営で受け入れられるわけもなく、人族の避難場所を探すことになったのだが、彼女にとって計算外だったことがある。そのような場所はそんなに簡単には見つからなかったということ。そして、少女の幼い手が自分が思っていたよりもずっと小さかったことだった。 結局のところ、ソレイユは人族の隠れ里を探すことをあきらめた。いたずらに時間を消費してあてもない旅をするより、静かな場所で暮らしの土台を作ることのほうがずっと合理的であると判断したためだ。自分にとっては何の苦にもならない長旅も、幼い少女にとってはなかなかに堪えるものであったようだった。同中ずっと握りしめていた小さな手の震えが、彼女にそれを教えていた。 戦場からも程遠い森の中で、少女とソレイユの仮暮らしが始まる。ソレイユは住居の建設をし、森での生活を少女に教えたらすぐに立ち去るつもりでいた。だが、夜になると同じ寝床に入り込み、手を握ってくる少女がいたのでは、そうもいかない。合理的に考えて、ソレイユは少女が一人でも眠れるようになるまでは一緒に生活しようと決断した。 月日は流れていく。森が紅くなったり、白い雪に覆われたり、五月蠅い虫の声に包まれたり……。沢山の森の顔を見た。 いつしか少女は、一人でも眠れるようになっていたし、旅の途中では見ることもできなかった笑顔を浮かべるようになっていた。だが、ソレイユが自分はもう必要がないだろうと彼女に伝えると、彼女は昔のような泣き顔を浮かべるのだった。 「ソレイユは私の家族なの」 その言葉が胸に突き刺さる。合理的に考えて、家族とは常に一緒にいるものだ。
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