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ソレイユは少女のそばにいることを決めた。
少女と共に過ごした時間はソレイユにとって未知の体験だった。一緒に行動をするより、別れて行動をしたほうが合理的なはずなのに、少女は常に彼女について回っていた。そして、どんな行動も、自分一人でするよりも早く完了するのだった。一人一人が別の使命を持ってバラバラに行動する機族での生活では決して知りえなかったことだ。なによりもソレイユにとって不思議だったことは、自分の内に未知の暖かな想いが溢れてくることを認知したことだった。それが何であるかはわからなかったが、悪い気はまったくしなかった。少女との生活を続けることが、自分の未知の領域の発見に繋がるとソレイユは合理的に判断し、この生活を守っていくことを決意した。彼女が自分を必要としなくなるまで、自分が新しい発見をできなくなるまでこの関係を続けるのだ。そんな日がくることがあればだが。
だが、現実はいつだって非常だ。
その日はいつもとは違っていた。少女が体調を崩し、いつもなら一緒に出掛けていた木の実採りに行けなかったのだ。いや、正確にいうと違う。少女はフラフラになりながらソレイユの後を追おうとしていたのだが、ソレイユは少女を制止し、ベッドに寝かせたのだった。
「静かに寝ていること。今のあなたが付いてきたところでできることは何もないわ。今のあなたにできることは一つだけ。静かに眠って私の帰りを待つこと。そして、私が採ってきたご飯で早く回復すること。それがあなたの使命よ。」
「でも、一人だと寂しいの……。」
「いつまでも子供みたいなことは言わないの。すぐに戻るわ。」
「早く戻ってきてね……。」
熱のせいか潤む少女の瞳を見つめ、ソレイユは家を出て行った。頭の中ではすさまじい速度で様々な情報をリサーチしている。人族のかかる病とその対処法についてだったり、人族にとって消化のしやすいものについてだったり、現状彼女が取れる最適な行動を選択しようとしていた。
普段なら足を踏み入れないような森の奥まで足を延ばし、熱病にきくとされている薬草を入手した時には、日が高く昇っていた。思ったよりも長い時間出歩いてしまっていたようだ。
帰り道を急いで戻る。心の中では、少女が遅くなったソレイユに頬を膨らませて文句を言う姿を思い浮かべていた。
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