ソレイユの回想

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ソレイユはやがて家にたどり着いた。 苦いらしいこの薬草をどうやって少女に飲まそうかと考えながら扉を開ける。 「少し遅くなってしまったな。すぐに楽になるものを食べさせてあげる」 少女は眠っているのか、何の反応もない。自分の言いつけを少女はしっかり守っていたのかとソレイユはやや安堵した。 安堵しながら寝床に入ったソレイユは目の前に広がる光景を理解できなかった。 ベッドの中で少女は眠っていた。ただし、その眠りからは二度と醒めることがないだろう。なぜなら、少女の胸には深々とナイフが付きたてられており、白かったはずのシーツは真っ赤に染まっているのだった。 「なんだよこれ……。なんなんだよこの胸の痛みは……!」 ソレイユは、大切な人が最も必要としていた時に傍にいれなかったのだ。それは生まれて初めて経験する失敗である。彼女は自分に失望した。使命の失敗とは貴族にとっては死に等しい意味を持つ。 「家族である少女との生活を守ること」 こんな簡単な使命を守れなかった自分に何の価値があるのだろうか。ソレイユは、その場に座り込んでしまう。それが功を奏したのか、ベッドの下に見覚えのないものが転がっていることに彼女は気が付いた。それは一輪の花であった。 「弔花の魔女……。」 ソレイユはその花を拾い上げると強く握りつぶす。自分に対する失望すらも忘れるほどの灼熱が身体に宿ったことがわかる。その熱が何であるかはすぐに理解できた。これが「怒り」というものなのだろうと。 胸に刺さったナイフを抜き、少女の身体を抱き上げたとき、彼女の次の行動は決定されていた。 「弔花の魔女よ、待っていろ。きっと同じ目に遭わせてやる。」 機族は本来復讐といった動機で行動を起こすことはない。復讐は何も生み出さないばかりか、既になくなっているもののために新しい犠牲を払うことはまったく合理的ではないからだ。だが、ソレイユは胸を焦がす想いに身を委ねることしかできなかった。彼女は気付いてしまったのだ。少女との生活を必要としていたのは自分だったということに。そして、同じ時間は二度と手に入らないということに……。
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