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L
時がゆっくりと流れていくのを感じた。
ノートにペンを走らせる音だけが、頭の中で聞こえている。その瞬間、僕は現実から乖離し、詩の中に入っていく。
綴られる言葉のひとつひとつが世界を少しずつ作り上げ、輪郭をはっきりさせていく。僕は傍観者としてその世界を見つめ、完成すると同時に、あちらの世界へと戻る。
僕にとって、現実こそが仮想世界なのだ。本来の世界は、ノートの中にある。詩の中にある。言葉の中にある。
WORLD(世界)とWОRD(言葉)は少し似ている。その世界を隔てるものは「L」だけだ。
それなら、そのLを探し出せば、僕はこの現実という仮想から抜け出て、詩の世界へと旅立てるのではないか。そんな風に考えている。
いつも僕は、Lを探している。単語としてのL。響きとしてのL。頭文字としてのL。だが、つかめない。そこにあるのは、どれもただのLにしか過ぎなかった。
僕は、僕という存在を消し去ることはできない。この仮想世界に縫い付けられた僕という存在。それを消し去るのは、死しかない。
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