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「そうかなぁ」
ひび割れた音階が風に流れてくる。最後の演劇の開演時間と、アワードの前にコスプレファッションコンテストとやらが開催されることを伝える放送だった。
「ふーん………え?先生と住んでるって言った?」
卵を噴きそうになった。
「食いすぎた」
またバスケットに手を伸ばし、全種類を一周したなと思ったところで気が付いたのだった。
「ううんいっぱい、半分は食べてもらわなきゃ余っちゃうなぁくらいの感覚で作ったから。だからちょうどいいの」
うれ、うれしいとどもりながら声を絞り出した二ノ宮は、両手で持った紙パックを握り潰しそうに肩を縮めた。閉じる唇に挟まれたストローの中を梨水が上って下りた。
「でも平気?食べすぎてない?」
「んー」
あと五切れは余裕でいける。
勧められたので残り二切れの片方をもらった。いちごとカスタードが挟まった残りの一つは取っておかれているように見えた。
背中に当たる温度の向きに時間の流れを感じる。コートを囲む人々は食べ終えた順に捌けていき、ベンチにも空きが出来ている。
「嫌い系のなかった?」
顎を動かしながら頷く。
「よかったぁ。そうだよね。好き嫌いないってトムくんに言ってたもんね」
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