プロローグ 純粋な二人の過去

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夢姫は絵を描いている希翔の邪魔にならないよう出来るだけ音を立てずに、静かに部屋に入ると、扉を閉め、床に体育座りになって、希翔が描く姿を眺めていた。 部屋へ入って来た夢姫に気付かず、希翔は一心不乱に絵を描き続けた。 本当に楽しそうに、絵を描く姿に夢姫は退屈そうな様子もなく、嬉しそうにその様子を眺めていた。 それからしばらくして「できたっ!」と希翔は達成感に満ちた声をあげた。 振り返って、人の気配に気付き、一瞬「わぁっ!」と驚くが、すぐに冷静になり。 「ひめ、来てたのか? 来てるんなら、声かけろよ、ビックリするだろ?」 ようやく夢姫がいることに気付いた希翔。 「ジャマしたくなかったから」 「邪魔にならないよ。つか、暇だったろ?」 希翔の問に夢姫は首を横に振った。 「全然。あきくんが描いてるところ、見るの好きだから」 「なんだ、それ。ひめはヘンなやつだな」 希翔は笑って言った。 「ヘンじゃないもん」 夢姫は、納得いかない様子で小さくほっぺたを膨らませた。 その様子に希翔は「ハハハッ」と笑い、夢姫も微笑んだ。 「絵、できたの?」 「ああ! ほら、みろよ!」 そう言って、希翔はさっき完成したばかりの絵を自慢げに見せた。 夢姫はその絵を嬉しそうに、キラキラと目を輝かせて見つめると。 「うん、すごい! あきくんはやっぱり、すごい!」 「だろ!」 「わたし、あきくんの絵、大好き!」     
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