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それに希翔は照れながら「ありがとう」と返した。
希翔は、夢姫がキラキラと目を輝かせ、自分の絵を褒めてくれるのが嬉しかった。
希翔が部屋に置いてある時計を見ると、午後五時を少し過ぎていた。
「少し早いけど、もう、行くか? 花火大会」
「うん」
夢姫はそう返して、小さく頷いた。
希翔と夢姫はこの日、地元の公園で行われる小さな花火大会へ一緒に行く約束をしていた。
二人は一緒に希翔のアトリエを出ると、一階のとある部屋に向かった。その部屋では先ほどの女性――希翔の母親、野々垣(ののがき)久美子(くみこ)が仕事をしていた。
久美子は作詞・作曲の仕事をしていて、多くのヒット曲を生み出し、数多くのアーティストの新曲を手掛けていた。
この日も家事をやりつつ、仕事の締め切りに追われていた。
「母さん、ひめと一緒にお祭り行ってくる!」
「二人だけで大丈夫? お母さんも一緒に行こうか?」
「大丈夫だよ! 母さん、仕事忙しいんだろ? いつも行ってる公園だから大丈夫だよ!」
と言って、希翔は夢姫を見て、「な、ひめ?」と同意を求めた。
夢姫はコクコクと頷いた。
「そう? 分かった、行ってらっしゃい!」
久美子は少し不安そうにしながらも、納得した様子で言った。
「じゃぁ、いってきまーす」
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