プロローグ 純粋な二人の過去

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お祭りと言っても、地域の人たちが開催している小さなお祭りだったため、本格的な屋台ではなく、焼きそばや焼き鳥、カキ氷、輪投げやヨーヨー釣りなど簡易的なものが殆どだった。 それでも、一緒に焼きそばやカキ氷を食べて、輪投げや百万円のクジなどをやって、二人はお祭りを楽しんだ。 出店の中に、おもちゃを売っている店があった。光るペンダントや、光る剣など、子ども向けのおもちゃが並べられていた。 その中に、光るおもちゃの指輪を見つけ、それを物欲しそうに夢姫が見つめていた。 「欲しいのか?」 希翔が夢姫に訊ねた。 それに夢姫は首を振って、「いい」と小さく答えた。 「そうか」 「行こう」 そう言って、夢姫と希翔はその店を後にした。 祭り用に設置されたテーブルで、希翔と夢姫は出店で買った焼きそばや焼き鳥をシェアして、一緒に食べていると希翔が突然、席を立った。 「どうしたの?」 「ちょっと、飲み物買ってくる。ひめは何がいい?」 「一緒に行くよ?」 「いや、俺、一人で行くよ。はら、席、取られた困るし」 「そ、そっか」 夢姫は少し寂しそうにそう言ってから、「わたし、ラムネが飲みたい」と答えた。 「はいよ! じゃぁ、行ってくるわ」 「うん」 夢姫は希翔を見送った。 少し長い時間が経ってから、希翔がラムネを二本持って、帰ってきた。 「遅かったね……」 「ごめん、ごめん。お店、混んでたんだ」     
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