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『捨我身池に魅入られた者は、いつか我が身を捨てることとなる。』
私の知る言い伝えだ。
小さい時から、この『魅入られる』というのが何を指すのか分からなかった。しかし、あの日ナツミのお婆ちゃんから聞いた言い伝えと繋ぎ合わせれば理解できる。
『ステガミイケに捨てたものは、元どおりの姿になって持ち主の元へ戻って来る。そして、ステガミイケに魅入られた者は、いつか我が身を捨てることとなる。』
ステガミイケは、その名前も言い伝えも二つに分かれていた。
私たちは、偶然その二つを別々に伝えられていた。
ナツミはこの池に魅入られてしまった。
そして、言い伝え通り最後には自分自身を元どおりにしてもらおうと、池に飛び込んだ。
ナツミがどのようにして魅入られていたのかは分からないが、きっと何かを元どおりにしてもらったのだろう。例えそれが夢や幻だったとしても、ナツミはそれに救われていたのだと思う。
そんな救いが必要なほどひどいいじめがあったことを知ったのも、この事件のすぐ後だった。
私は親友でありながら、ナツミの辛さを何も知らなかった。少しクラスメイトにからかわれただけでナツミを頼っていた自分が情けなかった。
それどころか嫉妬して、暗い感情まで抱いていた。
だからナツミが起きた時、私はいっぱい謝ろうと思った。しかし、いざナツミが起きても、次から次へと溢れてくる安堵の涙がそれを邪魔した。
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