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「では、状況を説明する」
IS学園オペレーションルーム。本来なら生徒の誰一人として例外なく知るとのない場所に、現在学園にいる専用機持ち全員が集められていた。
箒、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラ、簪、牡丹、楯無が立ってならんでいる。その前には、千冬と真耶だけがいた。
このオペレーションルームは完全孤立した電源で動いているらしく、ディスプレイはちゃんと情報を表示している。ただし、空間投影型ではない旧式のディスプレイだったが。
「しかし、こんなエリアがあったなんてね」
「ええ。いささか驚きましたわ」
「静かにしろ!凰!オルコット!状況説明の途中だぞ!」
「は、はいぃっ!」
「も、申し訳ありません!」
千冬の怒号で
鈴とセシリアのひそひそ話は中断される。それから改めて、真耶が表示情報を拡大して全員に伝え始めた。
「現在、IS学園ではすべてのシステムがダウンしています。これはなんらかのハッキングを受けているものだと断定します」
真耶の声にもいつもより堅さがある。どうやら、この特別区画に生徒を入れることは、かなりの緊急事態のようだ。
「それでは、これから篠ノ之さん、オルコットさん、凰さん、デュノアさん、ボーデヴィッヒさんは
アクセスルームへ移動、そこでISコア・ネットワーク経由で電脳ダイブをしていただきます。更識簪さんは皆さんのバックアップをお願いします」
「「「「「はい」」」」」」
箒たちはオペレーションルームを出る。
残ったのは、千冬、真耶。それに楯無に牡丹だった。
「さて、お前たちには別の任務を与える」
「なんなりと」
「わかりました」
いつものおちゃらけはゼロで、楯無は静かに頷き、牡丹はこれからの事態に落ち着いて返事をした。
「おそらく、このシステムダウンとは別の勢力が学園にやって来るだろう」
「敵......ですね」
この混乱に便乗して、介入を試みる国は必ずある。千冬はそう睨んでいた。
「そうだ。今のあいつらは戦えない。悪いが頼らせてもらう」
「任されましょう」
「お前には厳しい防衛戦になるな」
「ご心配なく。これでも私、生徒会長ですから」
そう言って不適に微笑んで見せるが、千冬の顔色はかわらない。
「しかし、お前のISも先日の一件で浅くないダメージ負っただろう。まだ回復しきってないだろう」
「ええ、けれども私は更識楯無。こういう状況下での戦い方も、わかっています」
生徒の長として、一歩たりとも引きはしない。その強い意思が双眸の奥に見えて、千冬はふうっとため息をついた。
「では、任せた」
「私への配慮はなしですか?」
「ふん。お前のISはほぼ無傷だったろうが。だが、気を付けておけ。相手は『アイツ』の可能性もある」
「わかってます。私も現在はこの学園の生徒です。任務はこなしますよ」
「ならいい。任せた」
楯無と牡丹はオペレーションルームを後にした。その姿がドアに閉ざされてから、千冬と真耶は重い口を開いた。
「私たちはなにをしているんだ..........守るべき生徒たちを戦わせて、私たちは....」
「織斑先生..........」
仕方ない、とは言わない。言ってはいけない。生徒を...........子供を戦場に立たせるなど、どんな事情であっても許されない。それは千冬にとっても、真耶にとっても譲れない一線だった。
「さあ、ぼんやりしている暇はないぞ。我々には我々の仕事がある」
「はい!」
そうして千冬も真耶も、ある準備へと取りかかった。
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