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SPside
「さて、と」
楯無は破壊した防壁から抜け出ると、軽やかに着地した。
「全校生徒は大体の避難が終わったようだし、それならまあ、大丈夫ね」
ぱっと扇子を開く楯無。そこには『迎賽』と書かれている。
『侵入警告』
ぴーっ、ぴーっと、音を立てて警告を告げる。
「ずいぶんと短時間で侵入してきたわね。常時監視してるってことかしら?」
楯無の声に呼応するように、銃声が鳴り響く。遠くまで真っ直ぐな廊下。そこには何も見えない。足音もしない。しかし何かいる。
短く音が鳴り、特殊合金製の弾丸が楯無に飛んでくる。しかし、それらはすべて楯無に目の前で止まった。
「!?」
「ふふん。なんちゃってAICよ」
実際には、正面にあらかじめ『ミステリアス・レイディ』のアクア・ナノマシンを空中散布していたのだった。ISの射撃武器ならいざしらず、通常兵器の弾丸程度はこうしてたやすく遮ることができる。
「ぽちっとな」
楯無がかちんと親指を閉じる。刹那、大爆発が廊下を飲み込んだ。
「ミステリアス・レイディの『クリア・パッション』のお味はいかが?」
こういった屋内戦闘は、本来ミステリアス・レイディの独壇場だ。なにせ、ナノマシンの分布密度から流動まで、すべてコントロールできるのだから。しかも相手は最新装備の特殊部隊とはいえ、ただの人間。いくら完全展開できないISであっても、相手になるはずがない。
「弱いものイジメみたいよねぇ」
はぁ.....ってため息をつく楯無。..........しかし
「うふふ。そういうのって大好き」
にこ~っと、魔性の女が微笑む。大体、相手はほとんどの生徒が非武装の女子校に乗り込んできたのだ。大義名分は楯無にある。
「さあ、行くわよ。必勝、楯無ファイブ!」
言うなり、その姿が五人に分かれる。ずららっと並んだ、ISスーツ姿にランス装備の更識楯無x5
「まあ、ミステリアス・レイディの機能なんだけどね」
すなわち、五体の内いくつかはナノマシン・レンズによって作り出した幻であり、その他はアクア・ナノマシンによって製造した水の人形だ。問題は、その内訳が分からないことだった。しかも、水人形にいたっては
「どっかーん」
爆発機能付きの実体なのだ。しかも、水で出来ているので銃弾は効かない。
「は、班長!このままでは.......」
「うわああああっ!?」
訓練された兵士、それも最高スペックの男たちがどんどんやられていく。
「ひ、退け!退けーッ!」
これで十六歳。しかも、機体も本人も本調子ではない。それでこの有様なのだ。つくづくISとは既存の認識を破壊し尽くしたのだと実感させられる。
「うふふふ♪」
炎の中、微笑む楯無。一○○パーセント、悪役だった。
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