16人が本棚に入れています
本棚に追加
「はぁ・・・・」
体育祭翌日、振替休日の午後を楯無は憂鬱に過ごしていた。自室のベッドで寝ころび、シーリングの明かりを指の隙間から眺め続けている。なんとかIS『ミステリアス・レイディ』の修復は終わった。楯無が現在国籍を置くロシアから予備パーツ一式、新規武装パッケージ数種類が届いたのだ。それらを組み込み、調整、仕上げる。それだけは午前中で終わった。しかし、楯無のため息はそれとは違うところにある。
(どうしよう・・・)
問題は大運動会でのことだ。あの最後の競技に水を差すつもりは毛頭なかった。これは真実で、実際そうしていた。けれども、二人が・・・・燈が危ないと感じた瞬間、思考よりもさきに反射していた。
(でもまずいわよねぇ・・・)
勝者を同じクラスにすると宣言した以上、何かしらの措置は必要だ。しかし、何よりも問題は――
(私が、少しでも望んでしまっていることよね・・・・)
二人と同じクラスになること・・・・燈と同じ時間を過ごすことを・・・・
「はぁ・・・・」
考えると、胸がドキドキする。これ以上はよそうと、ベッドから体を起こしたところだった。不意にドアがノックされる。
「はい?」
なんとなく出した、気の抜けた声。しかし、ドアの向こうから聞こえた声によって、一気に意識は吹き飛んだ。
「あ、そっか。俺ですよ。燈です、今時間いいですか?」
どきぃっ!心臓が飛び上がる。
「ちょ、ちょっと待ってて!」
自分の今の格好(下着にワイシャツ)を見て、慌てて着替えを始める。気が付けば洗濯物もだしっぱで片付けていない。特別個室の一人部屋は、こういう時に気を抜きがちだ。
「あ、あわわ・・・」
急いでいたせいでボタンを掛け違えてしまう。それを直そうとすると、大きな胸のふくらみが邪魔だった。
(ああもうっ・・・!燈くんが逃げちゃうじゃない!)
とにかく急いで身だしなみを整えると、楯無はやっとのことでドアを開けた。
「あら、寝てました?」
目の前にいるのは燈だ。しかも、当然の来訪で邪魔者はいない。これはほかの部屋の女子に気づかれる前に、自分の部屋に入れてしまうべきだと楯無は考えた。
「と、とりあえず中に入って?お茶入れるからっ」
「え?でも―――」
「いいからいいから!」
若干戸惑う燈の背中から押して、半ば強引に部屋に押し込む。
今まではどうということのない接触だったのに、今では心臓の鼓動が早くなってしまう。
最初のコメントを投稿しよう!