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その奇妙な感覚がもどかしいようなじれったいような、それでいて心地いいような不思議な衝動だった。
(うう、私・・・・すっごくドキドキしてる・・・)
心臓が痛く感じるほど、胸が苦しい。
それでいて甘美な快感が絶えず心を誘惑してくる。
(平常心よ、平常心・・・まず落ち着くの。そうすればだいじょう――ぶ?)
「あの、これ、落ちてましたけど・・・」
平然と燈が渡してきたのは、楯無の洗濯物――それも、よりによってパンツだった。
「きゃあああ!? か、返しなさい!」
ばしっと燈から自分の下着を奪い取る。そしてスカートのポケットに押し込むと、顔が真っ赤になってしまった。
(み、見られた・・・・見られちゃった・・・私のパンツ・・・・)
今までも自分から見せたことはあったが、不意に見られたのは初めてだ。それが穿いていない状態のパンツであっても、恥ずかしいことにかわりない。恋する乙女は繊細なのだ。
「あ、燈くん、責任取りなさい、責任!」
「責任って、なんのですか」
「そ、それはその・・・・ごにょごにょ」
はっきりと言えず、楯無は言葉を濁す。
(い、言えるわけないじゃない!そんな、アレとか、コレとか・・・)
なにやら生々しい妄想えおしているらしく、楯無は人差し指同士を合わせてもじもじと動かしていた。
「ん?楯無さん、熱、あります?」
燈は息のかかる距離で、楯無のおでこに手を当てる。
「ぴっ!?」
「ぴって、熱はないですね。昨日の疲れがたまってます?」
「そそそそ、そんなことないわよ?おっ、おねえさんはいつでも万全なんだからっ!」
虚勢をはる楯無だったが、そこを燈に突かれてしまう。
「さっきパンツ落ちてましたけどね」
「ば、ばかっ! 燈くんのエッチ!」
さっきのことを思い出して、また楯無は顔を赤らめる。だいたい、女子の部屋をじろじろと見るのは感心しない。そこは見なかったことにしてくれるのが、男の器量というものではないだろうが。
「燈くんは紳士ではないわね」
「はいはい。楯無さんは淑女ですよね。霧纏いの」
IS『ミステリアス・レイディ』のことを言っているのだと分かっているものの、燈に直接淑女と呼ばれるのは悪い気はしない。
(あ、そういえば)
「ねぇ、燈く――」
「刀奈さん」
―――ドキィッ!?
「お疲れ様会ってことで、どこかに行きません?」
目の前の男の子がひどく魅力的に見える。気が付けば、楯無―――もとい刀奈はこくんとうなずいていた。
「う、うん」
「どこか行きたいところってあります?」
「じゃ、じゃあ―――」
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