乙女の秘密は最高機密

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「ほらほら、これなんてどう?」 そう言って刀奈さんが見せてきたのは冬着にしては丈の短いファー付きのコートだった。 「あったかいんですかそれ?」 「あら、動きやすいのよ?これ。ロシアじゃさすがに通用しないけど」 そういえば、この人は自由国籍権を持っているが現在ロシアの『国家代表』だったな。 「ロシアか、そういえば行ったことなかったな」 「あら、そうなの?寒い国って言うけど春とか夏は普通よ?」 「一回、連れて行ってくださいよ」 そう返すと「え?」って帰ってきた。 「まずかったですか?見てみたかったんだけどな」 「ち、違うのよ。それじゃあ、いつか・・・・かならず、きっと、絶対ね!」 コートを握りしめながら、瞳を輝かせている刀奈さんを見る限り、いいところなんだろうな。 「あっ」 ふと、通り向かいにあるゲームセンターに気が付く。 「燈くん、あれ、あれ!」 「ん?ゲーセンですか?」 「私、あそこ行ってみたい!」 行ってみたいか、そういう経験ないんだろう。俺もあんまり無縁だったが多少なりともわかるか。 「いいですよ、行きましょうかゲーセン」 「うん!」 もうコートにはようがないと店員に押し付けて、刀奈さんはうきうきとショップを出る。 「楯無さん、あぶない!」 注意散漫になっていたからだろう自転車に気が付いていなかったため、俺は強引に引き寄せて両手で抱き寄せた。 「あ・・・・」 「まったく、逃げませんって」 「う、うん、ごめん・・・・」 ふう、小さな子を持つ親ってこんなにびっくりするものなんだろうな。とりあえず、信号が変わるまでこうしていよう。周りからなにか言われるかと思ったが特に言われなかった。 「信号変わりましたよ。行きましょうか」 手を繋いでいないと危ないなこりゃ。すっと、手を繋ぎ信号を渡る。 「そんなにがやりたいんです?」 「えっと・・・そうね、あっ、私ゾンビ撃つやつやってみたいわ!」 「ああ、ガンシューティングゲームですね。最近流行ってるのはIS対戦格闘ゲームですけど」 「そんなの私がやったら連勝止まらないわよ」 わかる気がする、さて、何種類かあったが一番の大画面のものを選んだ。 「じゃあ始めますか。小銭にあったあかな?」 はしゃぐ刀奈さんを見ていて思ったが「たぶんすぐコンティニューするな。500円くらいは」などと思い、最初に二人分の金額を入れると 「もう一枚入れて」 振り返ると、二丁拳銃でポーズをとる刀奈さん (いや、設定はアサルトライフルなんだけど) 別にいいかとおもいもう一枚入れる。 「銃ノ型、見せてあげる」 俺も構えるとゲームが始まった。そこからは無双ゲーの始まりだった。俺も数回はプレイしたことあったが 「お、おいあの子すげえぞ」 「一発も当たってないどころか、ゾンビをまったく近寄せない!」 「相方のフォローうますぎだろ、システム上のラグの隙があるのに」 「な、何者なんだ・・・」 ざわざわとゲーセンの中に人だかりができる。衆人環境のもと、刀奈さんはついにノーダメージでラスボスまで倒してしまった。 「ま、こんなものね」 レコード記録に名前を入力するとくるくると銃を回してポーズを決める。 「あ!あれって、美月燈だ!」 「ほんとだ!じゃあ、隣にいるのって彼女?」 「どっかで見たことあると思ったら、ほら、『ISモデルショット』の九月号表紙の更識楯無だよ!」 あらら、さすがに目立ちすぎたか、がやがやと話が広がり始めた。完全に注目の的だな。 「お、俺、サインほしいな」 「私は美月燈くんと写真撮りたい!」 「IDとか交換してもらう」 我先にと人の波が押し寄せてくる。 「楯無さん」 「ん?」 「逃げますよ!」 「うん!」 ご満足いただけたのだろ。俺の提案にすぐさま乗ってくれる。
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