第1章

2/5
前へ
/9ページ
次へ
灰色の空、湿った風、石造りの建物が入り組んだ迷路、覇気のない住人。 この町を構成するものは、大抵こんなつまらないものである。 唯一の観光地の海だって、ドブのように汚い。町は海に向かって傾斜になっており、どこを歩いても平面な道などない。 ここは、居場所を失った者達が集まる弱者の町だ。 職を失った者、愛する人を殺された者、生きる意味を見失った者。皆、この町に逃げてきたのだ。 町があれば、統治する者もいる。彼はブラックと呼ばれ、皆に慕われている。しかし、誰も顔を知らずどこに住んでいるかも分からない。 ただ、ブラックという男がいて、彼こそがこの町の統治者であることだけは明確である。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加