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ブラックは海に向かって歩いていた。
1人のおばあさんが家の前にティーセットを広げ、海を見ていた。
彼女の名前はホワイト。愛する亭主に先立たれ、住む家すら失った哀れな女。逃げてきたこの地で、1人寂しく余生を送っている。
「いらっしゃい、ブラックさん」
ブラックは、彼女の向かいの椅子を引いて静かに腰を下ろした。
「あなたがこのお家を紹介してくださったおかげで、こうしてゆっくりお茶が飲めるわ。ほかのお家は坂が急で、とてもじゃないけれどティーセットなんか広げられないもの」
彼女は「ありがとう」と、慈愛に満ちた笑みを浮かべた。
しばらく話を聞いたブラックは、ティーカップの下に置かれていた紙を取り立ち上がった。そして、頭を下げると再び海を目指して道を下っていった。
丁寧に折りたたみ、外套の内ポケットに入れた紙には、彼女の亭主の墓の場所が記されていた。
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