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「それに、最近グラン王子に取り入ろうなどと考えているのではなくて?わたくし、みましたのよ?」
「まぁ、なんて醜悪な。」
私のことはなんと言ってもらってもいい。しかし、あんな優しい方のことまで話に出すなんて許せない。あの方は私にとって、とても大切な方なのだから。そう思った私は沈黙を破った。
「あの方は関係ありません!変なことをいうのはやめてください!」
そんな時だった。後方から私たちの近くに来た人がいた。
「通行の邪魔です。」
とても小さな女の子だった。可愛らしい外見をしているのに、表情はなく人形のような少女だと感じた。小動物を思わせる風貌だ。
「アリミナール様」
私をいじめていた一人がそんなことを呟いた。
「グラン様の名前が聞こえました。あなた・・・。」
小さな女の子は私をみて話を続けた。
「あなたは相応しくない。」
表情を一切変えることなくそう言葉を残して歩き去っていった。もちろんいじめていた人たちも一緒に去っていった。
その出来事があり知ったことは、あの女の子はアリミナール・ブラックレスという名前で、グラン様の婚約者らしいということ。
どうやら、私の初恋は見事に玉砕されてしまったようだ。少し落ち込んだが、くよくよはしていられないと思っていた。
あの出来事があった後もグラン様との時間は続いていた。それに対してアリミナールという婚約者から直接なにかを言われたことはなかった。
しかし、あの日からいじめられていた現場にちょくちょく現れては同じようにこう言うのだ。
「あなたは相応しくない。」
そういってまたいじめは終了して、彼女たちは消えていた。
それが何度も続いたのだ。ある時から私は少し考えていた。なぜあのアリミナールという子は、いじめの現場に現れるのだろうと。
それはある時のことだ。
「リリーダ、俺の話を聞いてくれるかい?」
グラン様がいつものように私と話をしていた時だった。
「お待たせいたしました。」
ふと声をかけられたのでその人物を見ると、アリミナール・ブラックレスが立っていた。
「アリミナール、すまないね。」
「グラン様?一体?」
どうして私の目の前にアリミナールがいるのかわからず、グラン様に聞いていた。
「彼女は婚約者のアリミナールだ。アリミナール、この子はリリーダだよ。少し話をしたくてね。」
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