プロローグ

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前に現れた、という表現は間違っているのかもしれない。 だって、まだ彼女を前からちゃんと見たことがないから。 でも、それが、ちゃんと同じ横顔だって、わかる。 目で見て頭で反応するんじゃなく、心が勝手に反応する。 こういうのは、どう説明すれがいいのか、よくわからない。 自分の言葉でも表現できないけど、 彼女のことをずっと見ていたくて、 もっと知りたくて、自分のことも知ってほしい。 そんな感じ。 もし笑顔を向けられたら、 きっと目を背けてしまうんだろう。 心が多分、潰れそうになる。 風になびくまっすぐな茶色い髪、 ゆるくカーブしたまつ毛に、 優しさが篭った眼差し、 すっとした薄ピンク色の口。 愛しい。 でもそういうのって、 もっとお互いのことを知ってからじゃないと、 使っちゃダメな言葉なんでしょ? 何も知らないのに、 ずっと頭の隅に、君の存在があって、 いつかまたどこかで現れるかもしれないって、 街を行き交う人の中を、 なんとなく探してたのかもしれない。 こんなに人がたくさんいる街なのに、 いつかどこかで、きっとまた会えるって思ってた。 どうしてかは、わからない。 全ては、偶然には起こらないから。 全ての出来事には、いつも意味を持っているから。 そんなこと言ったら、クレイジーですか?
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