プロローグ

2/2
365人が本棚に入れています
本棚に追加
/569ページ
前に現れた、という表現は間違っているのかもしれない。 だって、まだ彼女を前からちゃんと見たことがないから。 でも、それが、ちゃんと同じ横顔だって、わかる。 目で見て頭で反応するんじゃなく、心が勝手に反応する。 こういうのは、どう説明すれがいいのか、よくわからない。 自分の言葉でも表現できないけど、 彼女のことをずっと見ていたくて、 もっと知りたくて、自分のことも知ってほしい。 そんな感じ。 もし笑顔を向けられたら、 きっと目を背けてしまうんだろう。 心が多分、潰れそうになる。 風になびくまっすぐな茶色い髪、 ゆるくカーブしたまつ毛に、 優しさが篭った眼差し、 すっとした薄ピンク色の口。 愛しい。 でもそういうのって、 もっとお互いのことを知ってからじゃないと、 使っちゃダメな言葉なんでしょ? 何も知らないのに、 ずっと頭の隅に、君の存在があって、 いつかまたどこかで現れるかもしれないって、 街を行き交う人の中を、 なんとなく探してたのかもしれない。 こんなに人がたくさんいる街なのに、 いつかどこかで、きっとまた会えるって思ってた。 どうしてかは、わからない。 全ては、偶然には起こらないから。 全ての出来事には、いつも意味を持っているから。 そんなこと言ったら、クレイジーですか?
/569ページ

最初のコメントを投稿しよう!