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「振られたんじゃねーよ。今新商品の開発で忙しいんだって。リスケするって言ってたし。」
「でもそれにしても仁ってモテるよね~。
いくら仕事相手とはいえ、興味がなければわざわざこんな若造と疲れた仕事後に2人で飲みになんて行かないくない?
しかも金曜の夜に。」
仁が関わる会社の担当者は、ほとんどが部長クラスの人で、忙しい人が多い。
また、和田チーム自体、アパレル、コスメといった、女性が比較的多い業界を担当しているチームということもあり、女性担当者も多い。
「しっかしさー、どうやってそんな頻繁に『じゃあご飯行きましょう』みたいな流れになるの?」
それは私も疑問だった。
仁は口をすぼませ、少し考えるようにしてから答えた。
「そりゃあ色々だよ。
単刀直入に、『今度ご飯しませんか?』って聞くこともあれば、それがまずそうな時は周りくどく聞くことだってある。
『この近くのどこどこってお店美味しいですよね、俺、イタリアン好きなんですよね。』とかから始めて『へー、イタリアン好きなんだ。どこそこってイタリアンもおすすめだよ。』ってきたら『僕そこ行ったことないです。』、『私も最近行ってなかったし、じゃあ今度時間がある時、行ってみる?』って誘ってきてくれることもある。
まぁそんな上手くいかない場合は『行ってみたいですけど、残業が多くてなかなか友達と時間が合わなくて行けないんですよね。ひとりで行くなんて寂しいですし。』とか。
最後は『真淵さん時間があれば是非一緒にいかがですかって誘いたいですけど、そんな暇な人じゃないですよね』とか。」
さらさらと出てきた言葉に、私はぽかーんとしながら仁を見た。
「よくそういう会話がすらすらと出てくるね。さすが営業。」
私は正直な感想を述べた。
「日々色んな会話のボールを投げてますからね。」
仁は冗談混じりで言っているようだったが、少々自慢げのようだった。
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