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綺麗に揃った睫毛を見つめていると、強張っていた力がすっと抜け、仁の胸を押す腕が落ちていく。
今まで逃してきた時間を埋めていくような、静かで優しくて、長いキス。
苦しくなってきたところで顎をひき、唇から逃れようとしたが、それを許さないように手で頭を押さえられると、またすぐに唇を塞がれた。
「んっ・・・。」
さっきよりも強引で、仁の男の力を感じ、胸の奥がぎゅっと熱く、痛い。
このまま仁の腕の中で溶けてしまいたいと思うのに、ずっとずっと、抑え込んでいた気持ちがやっぱり戸惑わさせる。
再び仁の胸を押し抵抗しようとすると、キスをしたまま目が合った。
とろんとしていて、色っぽくて、もっと見ていたい、唇を感じていたいと思うのに。
今度は私の力に従うように、そっと唇から離れた。
「・・・俺じゃ嫌?」
初めて聞く仁の、くすぐったいような、緩くて甘い声。
こんな意地なんて捨てて、全部忘れたフリをしてしまいたいくらいなのに、それが出来ない不器用な自分が本当に嫌い。
「だって・・・、私を傷つけるようなこと、できないんじゃなかったの?」
「うん。
したくない。
・・・なんでかわかる?」
「だって・・・、私に勘違いさせたくないから。」
「勘違い?」
眉間に皺を寄せて、わからないっていう顔。
わかってるくせに、こんな時にまでジリジリさせられると胸が潰れる。
「だからっ。
仁が私のこと好きかもしれないって、そう期待されたら困るからでしょっ?」
一体何を考えてるの?
どうして無表情のまま、何も言ってくれないの?
なによ、そんなに落ち着いて。
否定もしてくれないの?
だったらどうしてキスなんかしちゃうのよ。
もうっ、と大粒の涙が落ちかけた時。
「困るわけないだろ。
俺はずっと、理沙以外見えてない。
好きで好きで、もがいてたのは俺だよ。」
喉まで出てきていた次の罵声は、その言葉と同時に溶けていく。
ずっとそう言われたかったのに、目の前で実際に言われる日がくると、どう反応していいのだろうか。
そんなことに悩むのは束の間のこと。
「でも、色々と理沙に話さなきゃいけないことがある。」
真剣で、どこかもの悲しげそうな瞳に、またいつもの不安が押し寄せる。
「俺は、そばにいれなくなる。
4月から、LAに行くことになった。」
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