※30、雨落ちれば

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それでも、必ず帰り際には、何を食べたかとか、今日は誰と会ったとか、明日は会えるといいなとか、そういうメッセージが来るようになった。 週末になると、泊まりに行ったり来たりした。 焼き鳥とか、居酒屋とか、ラーメンとか、焼肉とかでご飯して、家でまったりする。 まったりと言っても、くっついて映画を観たり、抱きしめあったり、キスして、好きをいっぱい伝えられて。 宣言された通りのことだけだった。 一緒のベッドに入っても「おやすみ」を言えばそれで終わり。 激しいキスとか、それ以上のことは、どうやら進めたくないらしい。 キスが続くと止めちゃうし、ベッドに入ってからのハグは淡白なもので、そういう雰囲気にならないように自制しているのは明らかだった。 恋人になったわけじゃないから? そういう関係になると、別れが辛くなっちゃうから? それとも、柴田君に見せられた動画のせい? 好きな人を他の人に抱かれているところを見せつけられるなんて、相当な衝撃だったのは間違いない。 淫らな女だって、失望されたのかもしれない。 本心を聞いてしまえばよかったのかもしれないけど、本当のことを知るのが怖くて、できなかった。 仁の寝顔を見つめながら、寝れない夜を何度か過ごした。 同部署である柴田君とは毎日顔を合わし、打ち合わせもするし、一緒に出掛けることもある。 話すことは最低限、もちろん、仕事のことだけで、目を合わすことは避けた。 なのに。 遅くまで残業していた、ある夜。 なかなかデスクから離れられず、夜食を買ってくる時間もなく、さすがに空腹が限界にきていたので、リフレッシュルームに何かないか覗きに行った。 部屋の電気は消されていたが、自販機や廊下からの明かりもあって、真っ暗というわけではない。 電気をつけず薄暗い部屋のまま、バランス栄養食らしきものを見つけると、貯金箱にお金を入れて部屋を去ろうとした時。 部屋の奥にある畳スペースから、唸るような低い声が聞こえてきたのだった。 遅くまで残業している人は、時々ここで仮眠する人もいて、それは別に珍しいことではなかったものの、唸り声が気になって、私は畳スペースの方に足を進めた。 畳の上に、靴を履いたまま横たわる大きな体。 誰だかわかった瞬間、そのまますぐにその場を去るべきだった。 でも、いつもと違う姿を見せられると、やっぱりそのまま放ってはおけなかった。 同じチームの仲間として、営業を支えるべきポジションとして。
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