※30、雨落ちれば

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「I’m sorry about that. (なんかごめんね。) Thank you for coming tonight. (今日は来てくれてありがとう)」 「ううん、私こそこんな素敵なパーティに招待してくれてありがとう。 すっごく素敵な空間だね。」 「さすが庄司さんパワーでしょ。」 くすくすと笑いながらも、微妙な間が空いて、さっきのやり取りのぎこちなさを感じ「ところで、さっきのは?」と思い切って聞いた。 流石に、あそこまで言われると気になる。 『例の理沙』って何? 「・・・言うの?これ。」 少し恥ずかしそうに視線を逸らしながら苦笑いを見せたので、私も笑顔になり「気になる、かな」と返した。 しばらく躊躇いながらも大きく深呼吸をすると、やっと言う覚悟ができたらしい。 「I thought I asked you out on a date, but she was a wrong Risa.」 「え?」 いきなり早い英語で言われるとついていけないけど、今デートって言った? 「もう言ったよ。」 今までに見たことのないとびきりの笑顔で誤魔化そうとする。 「ずるいよ。 いきなり英語でサラッと言うから聞き取れない。」 このやり取りを楽しんでいるのか、相手はクスクスと笑っている。 「ふふ。 You ready? (いくよ?) I thought I asked you out on a date, but(キミをデートに誘ったと思ったんだけど) she was a wrong Risa!(別のリサを誘っちゃった。) ・・・わかった?」 言っている意味を理解して、私は驚きながらルカの目を見た。 ルカが私をデートに誘おうとしてたってこと? そういえば、以前、庄司さんと行ったキャバクラにリサという人がいて、同じ名前だったから思い出したとか、言っていたような。 返す言葉が見つからなくて、ただ笑顔で見つめてくるルカを見返すだけだった。 「hold on.(ちょっと待って。) 」 そう言いながら自分の携帯を取り出すと、私に写真を見せてきた。 写真共有SNSのページらしく、そこにはルカがアボーノのカウンターで黄昏ているような写真があった。 緩んだ胸元と手にはウイスキーらしきロックグラス、カウンターにはピンクや薄紫が混ざった綺麗な花束。 『こういう夜もあるらしい』というコメントが写真に添えられ、多くの「いいね!」とコメントが寄せられているようだった。 「これがその日の俺。 有田さんに『イタイ』って言われた。 惨敗って言葉も学んだ。」 あまりにも楽しそうに自分の自虐ネタを話すので、つられて私も笑うと、肘で軽く腕を突つかれた。 「Hey you. You are not supposed to laugh at me. (君は笑うとこじゃないでしょ。)」 「ごめんごめん。 だって、ルカ楽しそうだから。」 「Yes. You make me happy. (うん。 君といるとハッピーだよ。)」 笑っているけど、さっきとは違うまっすぐな眼差しが向けられ、思わずドキッとしてしまった。 間近で見つめられ、返事に困っているところに、タイミング良く千秋は戻ってきた。 「聞いて聞いて! 庄司さん、湘南に別荘あるから、今度このメンバーで泊まりに行こうだって! 番号交換もしちゃったっ!」 「That sounds fun. (楽しそうだね。)」 ルカが答えると「What are you guys talking about?(何話してるの?)」と横から流暢な英語で混ざってきたのは仁だった。
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