episode 11 ネズミたちの来襲

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「……オリ!」  屋外から漏れるネオンの後光に照らされて、スーツ姿の越川がドア越しに立っていた。  映画『卒業』のワンシーンのように。 「悟!」  豪胆な般若から、か弱き姫へ。神楽の面が変化するように、ここでも加織は表情を変えた。砂織に凄んだ場面でのドスの利いた声とは真逆の甘え声で、早口で思いの丈をまくし立てる。 「もう大丈夫よ、悟。悪い商売女の誘惑から、あなたを守るために来たの。大丈夫よ、これからは私が……」  愛しい(ひと)の元へと駆け寄った加織は腕を絡ませようとするも、まるでその姿が目に入っていないかのように、彼女の脇を越川はスルリとすり抜けた。 「……オリ……」  再び名を呼び、越川は立ちつくす砂織にそっと触れる。 『ケガはありませんか』 『私は、大丈夫』  その身の無事を確かめると、しっかりと抱き寄せた。  越川が叫んだ名は『加織』ではなく━━『砂織』だったのだ。
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