四、

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 一つ一つ自分の手で電気を落としていきながら、玄関の扉が閉まる最後の瞬間まで、満月は那巳と暮らした部屋を名残惜しそうに見つめていた。 「本当にありがとう。気を付けて帰ってね」  運転も駄目だと、満月は桐仁を助手席に押し込み自分でハンドルを握った。送ると言ってくれたが、歩ける距離だからと丁重に断った。  満月は桐仁を病院に連れて行くつもりだとこっそり言った。怪我の説明に困ることもあり、桐仁はあまり乗り気ではなさそうだったが、確かにその方が安心だろう。  車が遠ざかって行くのを見送って、二人はなみのところへ向かった。  さすがに疲れていたが、荷物も放置したままだったし、康助には確かめたいこともあった。  その頃には日の出も迎えて、森の中は随分明るくなっていた。なみは胸の前で手を握り合わせ、二人が来るのを待っていた。 「おはよう、なみ」 「ただいま」  いつも通りに笑いかけると、なみも少しだけ笑った。 『――お帰りなさい』 「・・・落ち着いた、みたいだね」  高柳の問いかけに、こくりと頷く。  まずはなみが案じていた満月と桐仁の様子を話して聞かせた。とりあえず無事だと分かって、なみは本当に安心したようだった。  高柳は項垂れると、悔しそうに唇を噛んだ。 「見てるだけだった。役に立てなかった。・・・ごめん」  なみは静かに首を横に振った。     
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