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「康助でいい。なんか堅苦しくって、俺そっちで呼ばれるのあんま好きじゃないんだ」
「じゃあ、康助。そんなとこに突っ立ってないで、座ってろよ」
康助があまりに熱心にのぞき込んでくるので、我慢しきれなくなった高柳が手を止め振り向いた。不快という程ではないが、やりにくくてしようがないといった風だ。
「心配しなくても、薬がいらない程度のものは作れるから」
「いや、そうじゃなくて。上手いもんだなと思って」
「それはどうも。暇なら手伝うか?」
「自慢じゃないけど、俺は小学校の家庭科でキュウリ切って以来、包丁なんて触ったこともないぞ。俺の包丁さばきはホラー映画並だって評判だったからな」
赤いキュウリ伝説、詳細は説明するまでもないだろうが、康助の参加した調理実習はそう呼ばれ、今なお母校で教訓として語り継がれている。・・・らしい。
威張って言うなと思いながら、高柳は康助にリビングでテレビでも見ているよう勧めてみた。返ってきたのはなんとも脱力するような答えだった。
「えー、お前見てる方がおもしろい」
勝手に娯楽にされても困るので、高柳は最終案を提示した。
「じゃあ、俺の部屋行ってろ。二階に上がった突き当たり。本でもCDでも、何でも好きなの見てていいから」
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