四、

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 ――傷を消したのがなみなら、負わせたのもなみ。  きっと桐仁もそうだ。康助はあの時確かに見たのだ。桐仁の足首がありえない方向に曲がるのを。あれはアザだけで済むような怪我ではなかった筈だ。  なみの姿が、朝日の中で白く儚く揺れている。  康助の知る今の姿を光とするならば、夜に現れたあの闇は影。恐ろしくて残酷な、なみから生まれた哀しい影。  なみの、もうひとつの姿だった。
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