五、

6/14
前へ
/205ページ
次へ
「驚くのも無理ないけど。香純さん、若く見えるしね。今日はまた一段とラフな格好してたから」  高柳は事もなげに言ってのけたが、驚いたどころの話ではない。原田の父親と彼女とでは年が一回り違うと聞いてはいたが、それがどういうことなのかを改めて思い知った。  ジーンズにパーカー、おまけにノーメイクに近かった香純は、姉の郁子とあまり変わらなく見えた。とても三十路前とは思えなかった。 「優真から俺が学校休んでるって聞いて、今日はお見舞いにケーキ焼いて持って来てくれたんだ。香純さん、得意なんだ。ちゃんと康助の分は取ってあるから。甘いもの、好きだろ?」 「あ、うん。後で貰う」  家でもたっぷりおやつを食べてきたばかりだ。どうも最近は高柳や西村さんにまで、食欲で元気のバロメーターを計られている気がする。  高柳の後を追うように階段を上がりながら、康助は思い切って聞いてみた。 「お前、随分親しいみたいだけど、よく会うのか?」 「よくって程じゃないけど、何度か会ってるよ。優真は真樹ちゃんに会いに行く時、大抵俺を連れて行ってたから」 「なんで?」 「香純さんと二人きりにならないための保険、・・・かな」     
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加