五、

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 考えてみれば、それは当然のことだった。幼い真樹が一人で出掛けられる筈はない。優真が真樹に会うということは、イコール香純にも会うということなのだ。  きっと二人は高柳を介することで、なんとか場を持たせてきたのだろう。原田が心を許す高柳という存在は、香純にとっても心強かった筈だ。  階段を上りきったところで、康助はふと立ち止まった。ずっと不思議に思っていた。どうして高柳はこんなに簡単に、原田の家の事情を自分なんかに打ち明けてくれるのだろう、と。その答えが、唐突に分かった気がした。  高柳はきっと・・・分かってほしかったのだ。原田の置かれている状況を。その上で、周囲に味方の少ない原田の、理解者の一人になってほしかった。  ドアノブに手をかけ、高柳が立ち止まったままの康助を振り向く。いつもと変わらないそのポーカーフェイスを見つめて、 (・・・なんだよ。お前ら全然両思いじゃんか)  康助は半ば呆れていた。  お互いに相手の力になれない状況に胸を痛めながら、高柳と原田は、離れていてもちゃんと繋がっている。  原田に会ったことを話すべきか迷っていたが、とりあえずやめた。まさか原田からお前のことを託された、とも言えない。高柳が知らないということは、原田は別ルートから調べ、わざわざ話をしに家までやって来たのだ。     
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