五、

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 なみも状況を把握していた。不安そうな瞳で見つめる康助に対して、とても落ち着いた口調だった。 『工事は来週には再開されるみたい』  康助は言葉をなくした。  なみだけじゃなかった。ニーニャの命にも期限があった。忘れていた訳ではないのだが、この場所は世界から切り離されているように思ってしまっていた。時間は、誰の上にも等しく流れているのに・・・。  項垂れる康助に、なみのやさしい声が降る。 『康助君、ここに来て立ってくれる?』  言われるまま、なみの示した場所に移動した。 『じゃあ両手を前に出して。しっかり受け取ってね』 「え?」  意味が分からず戸惑っていると、バキバキッと枝の折れる音がして、康助の手の中にニーニャの枝が落ちてきた。 「うわ、わっ!」  強風が吹いた訳でもなければ、なみも触れていない。枝はニーニャの意志で自ら折れ、康助の手に落ちてきたようだった。 『ニーニャがね、康助君に受け取ってほしいって』  握り締めた枝をまじまじと見つめ、それから枝があった元の場所を見上げる。それは、康助がいい感じだなぁと思っていつも見ていた枝だった。  太さも適度で、真っすぐ伸びている。余計な枝葉を落として手元に布でも巻いたら素振りに良さそうだ、ニーニャを見上げる度にこっそりそう思っていた。     
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