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高柳のことを持ち出されると、康助は言い返せなかった。心臓がひやりと冷たくなる感じがする。なみのこととなると、正直どう動くか予測もつかない。
『勝手かもしれないけど、康助君がいてくれるから大丈夫だって思える。あなたはきっと私のように間違えたりしない。・・・会えて嬉しかった。友達だって言ってくれて嬉しかった。本当にありがとう』
「なみ、何言って――」
『今の内にちゃんと言っておきたいの。次に会う時、私はもう私ではいられないかもしれないから』
高柳が言っていた。闇に主導権を奪われている間は、なみとしての意識はないらしい。でも朝になれば自分のものとしてすべての記憶が残っている。
重ねた昼と夜の間で、なみはどれ程苦しんできたのだろう。
『ほんとはね、今からでも逃げ出してほしい。もう充分だからって、まだしつこく思ってるのよ。でも二人とも相変わらずで――。最近の高校生は誰でもこんなに無鉄砲なのかしら?秋なんて脅しのつもりで正体を話して、最初から全部知ってたのよ』
頬に手を当てながらのなみの大袈裟なため息に、康助は思わず笑ってしまった。
なみの中身が成人女性だということは理解しているが、今の外見と所作とのギャップがすごい。
『もう、笑うところじゃないでしょ』
「ごめん、つい」
拗ねるとますます反則技だ。
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