六、

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 どうやら近くにいたらしい。高柳の手が康助を探して肩に触れる。と、その時不意に淡い光が浮かんだ。 「康助、それ――」  康助の手の中で、ニーニャの枝の先端が松明のようにポウッと白い光を放っている。落とさずしっかり握り締めていたようだ。淡い光の輪の中、互いを確認しホッと息を吐いた。  迂闊には動けず、まずはその場に座り込んだままで周囲の様子を探ってみた。携帯は圏外だったが、ライト代わりにはなる。それでも闇の奥を見通すことはできない。  目が慣れるのを待って、移動を始めた。高柳の提案で、はぐれないよう手をつないだ。通常なら絶対に断るが、今は非常事態だ。恥ずかしさを闇に紛らし、素直に手を差し出した。  進む先はニーニャが教えてくれた。枝を動かすと、光が強くなる方向がある。きっとそこになみ達がいる。 「あのさ、俺達がいるのって、もしかして・・・」 「多分、そうだと思う」  二人ともはっきり口にこそしなかったが、状況は大体把握できていた。  ここは満月の部屋に口を開けていたあの黒い穴の中だ。いや、部屋そのものが既に取り込まれていたと考えるべきだろう。  どのくらい進んだ頃か、前方がうっすら明るくなってきた。外に通じていたのかと思ったが、違った。たどり着いたのは、洞窟のような開けた空間だった。     
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