六、

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 ここが行き止まりのようだが、濡れたように黒光りする岩肌に囲まれ、振り返っても今来た方角が分からない。高い天井が蛍のように明滅して、一定の明るさを保っている。ニーニャの枝の光も消えた。  周囲の様子を見回していると、 「――!!」  何かに気付いて驚いたように高柳が突然駆け出した。その先にはモニュメントのような球体がある。後を追った康助も息を呑んだ。  半透明の大きなビー玉みたいな球体の中に、満月と桐仁がいた。けして離れないよう、二人はしっかりと互いの体を抱き合い中央に浮かんでいる。 「桐仁さん!!満月さん!!」  高柳が拳で叩いて大声で呼びかけても、二人はピクリとも動かない。目立った外傷はなさそうだが、固く瞼を閉ざした青白い表情が最悪の事態を連想させる。  気を失っているのか、眠らされているだけか。・・・中に空気はあるのか。外側からでは何も確かめることができない。  康助も球体の表面に触れてみた。硝子のように冷たく固いのかと思ったが、分厚いゴムのような感触だった。 「高柳、ちょっとどいてろ」  康助はニーニャの枝を構えると、高柳を下がらせた。根元に巻き付けた滑り止めの布も手によく馴染んでいる。上段の構えから、気合と共に鋭く打ち下ろした。――が、球体には何の変化も起こらなかった。衝撃がそのまま、康助の手に跳ね返ってきただけだ。 「・・・っつぅ」 「大丈夫か?」     
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