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再び考え込むように沈黙しても、康助は辛抱強く待った。
「なみがあそこにいるのは、・・・守ってるからなんだ」
慎重に言葉を選ぶようにしながら、長い睫に縁取られた瞳が康助に向けられる。
「なみの隣に、すごく立派な木があっただろ?」
「ああ。あの白い木のことだろ?」
康助の返事を聞いて、高柳の表情が複雑そうに崩れる。
「白い、か・・・。やっぱりお前にもそう見えるんだ」
「え・・・?」
康助には言葉の意味が分からなかった。が、高柳はそれについての説明はせず、目線だけでブラインドの向こうを示した。この部屋からもあの森が見える。向かいの家の屋根の上から覗いている。高柳はなみのいる森を見つめ、大切な呪文のように同じ言葉を繰り返した。
「なみは、あの木を、あの木に宿る魂を守ってる」
そうして、にわかには信じ難いとても不思議な話をしてくれた。
彼女――と、もしそう呼んでかまわないのなら、あの木の名前は『ニーニャ』。木に宿る魂ということだから、いわゆる精霊みたいなものだろうか。
ニーニャは、あの場所でずっと大切な人を待っているのだと言う。
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