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新宿駅前のフルーツショップの前で、安東要はデート相手を待っていた。
「安東君、待った?」
月読波奈は、今時、珍しい牛乳瓶の底のような丸いメガネをクイッと持ち上げながら、美少女気取りで安東要を見つめた。
黒いゴスロリメイド服で厚底ブーツを履いている。
通称≪ブスメガネ≫、安東要的にはむしろ振られた方が幸せである。
こんな女と何故デートの約束をしたのか、自分の正気を疑いたい気分だ。
若さゆえの過ちにちがいない。
一応、名門大学のラノベサークルの後輩だが、安東要は三浪しているので、まだ、大学三年生の24歳である。彼女は二年生の20歳である。
「いや、さっき来たばかりだよ。でも、波奈ちゃんのためなら何時間でも待つけどね」
安東要は軽くウィンクしてみせた。
彼はちょっと頼りない感じだが、容姿や顔には非常に恵まれていた。
人気ロックミュージシャンに少し似てる甘いマスクの彼が 月読波奈と腕を組んで歩きはじめたのを見た周囲の女性は、振り返りながらため息をついた。
何という物好きなのか?という冷たい視線が安東要の身体に突き刺さる。
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